はじめに
組織運営において、「仕組み化」は避けて通れないテーマです。
特定の個人に依存した業務の属人化は、組織の成長を妨げ、個人の負担を増大させます。
私自身、医療・介護現場で管理職として働く中で、仕組みの欠如がどれほど現場を混乱させるかを痛感してきました。
安藤工大さんの書かれた『とにかく仕組み化』は、組織が効率的に機能し、成長するための考え方と具体的なステップを示した実践的な一冊です。
単なる効率化のテクニックではなく、組織全体を強くする「仕組み作りの本質」に迫る内容となっています。

仕組み化が必要な理由
本書では、仕組み化が必要な理由として次の2点が挙げられています。
人は弱いから

私たちは「やるべきこと」を先延ばしにしがちです。
仕組みがなければ、優先順位が曖昧になり、業務が滞ります。
例えば、「メールの返信は〇時間以内」など、シンプルなルールを設定するだけで組織のスピード感が向上します。
組織は放っておくと属人化するから
特定の人にしかできない業務が増えると、休職や退職の際に業務が停滞します。
本書では「誰でもできる仕組み」を作ることで、組織全体の安定性を高めることの重要性を強調しています。
私自身も、あるスタッフの急な退職によって業務が混乱した経験があります。
そのとき、業務フローのマニュアル化が不十分だったことを痛感しました。
また、私自身しかできない業務もあったので、マニュアル化して誰でもできる業務への変化させて行きました。
これをやると自分だけのスキルがなくなってしまう気持ちになりましたが、上司からは組織の成長のために助かると評価もされました。
本書の指摘は、まさに現場の課題に直結しています。

仕組み化の実践ステップ
本書では、仕組み化を進めるための5つのステップが紹介されています。
誰がどの判断を下せるのかを明確にし、無駄な確認作業を減らします。
「このままではまずい」という共通認識を持つことで、仕組み化の推進力を高めます。
「頑張った人が正当に評価される仕組み」を作り、組織のモチベーションを維持します。
組織の方向性を明確にし、すべての仕組みを理念と一致させます。
進捗を可視化することで、関係者の意識を高め、継続的な改善を促します。
「責任と権限の明確化」は、役職者という役割が付与されていることで明確にはなっています。
しかし、難題があると責任の押し付け合いが発生するケースもあります。
曖昧な部分は明確にしておくことが重要となります。
「歯車になること」の意味

本書の中で特に印象的だったのは、「会社の歯車になることを恐れるな」というメッセージです。
仕組み化を進めると、「個人の自由が失われるのでは?」と不安に思う人もいるでしょう。
しかし、本書では「個人の成長と組織の成長は両立できる」と強調されています。
組織の中で与えられた役割を全うしつつ、自己成長の機会を見出すことが重要です。
これは、組織の一員としての自覚を持ちつつ、自己実現の道を探ることに通じます。
私もこれまで、「個人のスキルを磨けば評価される」と考えていました。
しかし、実際には「組織の仕組みを理解し、活用できる人材」が真に価値を発揮できることを、本書を通じて再認識しました。
まとめ:組織の未来を変えるために
『とにかく仕組み化』は、単なる業務効率化の本ではなく、「組織と個人の成長を両立させるための指南書」です。
医療・介護現場では、「仕組みがないために疲弊している管理職」が多くいます。私自身もその一人でした。本書は、そうした状況を打開し、持続可能な組織運営を実現するためのヒントを与えてくれます。
「仕組みを作ることで、自分自身も楽になる」
この言葉に共感できる人は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
仕組み化を進めることが、組織の成長はもちろん、あなた自身のキャリアを豊かにする第一歩となるはずです。

安藤さんの本は他にも「数値化の鬼」「リーダーの仮面」といった本もあります。
マネジメントを行なっていく上で参考になるのでぜひ他にも読んでみることをオススメします。
