管理職として、正直に言う。嫌いなスタッフがいた。
「管理職なんだから好き嫌いを持つな」と言う人もいる。でも感情はある。むしろ、「ない」と言う管理職の方が怖い。問題は感情があることではなく、その感情に行動を支配されることだ。
どうすれば、嫌いなスタッフとうまく働けるか。長い試行錯誤の末に、少しずつ分かってきたことを書く。
まず「何が嫌いなのか」を分解する
「あの人が嫌い」という感情は、よく見ると複数の要素が混在していることが多い。
仕事の質への不満なのか。コミュニケーションの取り方への苛立ちなのか。自分の価値観と合わない行動への反発なのか。それとも、過去に何か具体的な出来事があったのか。
「嫌い」という大きな感情を分解すると、対処できることとできないことが見えてくる。「報告が遅い」なら業務上の問題として対処できる。「なんとなく合わない」は個人の感情の問題で、変えられるのは自分の受け取り方だけだ。
「仕事上の評価」と「個人的な感情」を切り離す
これが管理職としての一番重要なスキルだと思っている。
嫌いなスタッフが良い仕事をしたとき、正当に評価できるか。好きなスタッフがミスをしたとき、きちんと指摘できるか。これが逆転しているチームは、すぐに崩れる。
私がやっていることは、評価や指導の場面では「この人のことが好きか嫌いか」を意識的に棚上げすることだ。「今この場面で、この行動・この仕事をどう評価するか」だけを考える。完璧にはできないが、意識するだけで随分変わる。
「嫌い」には理由がある——そこに向き合う
少し深い話をする。
人が誰かを強く嫌うとき、そこには「自分の中に似た部分がある」ことが多いと言われる。心理学でいう「投影」だ。
私の場合、遅刻・準備不足・言い訳が多いスタッフへの嫌悪感が強かった。でも後から気づいたのは、若い頃の自分にも似たような部分があったことだ。それを否定してきた分だけ、他人のその部分が許せなかった。
これに気づいてから、不思議と感情の尖りが少し和らいだ。相手を変えることはできないが、自分の感情の出所を知ることで、飲み込まれなくなった。
最低限の関係で「機能する関係」を作る
嫌いなスタッフと「仲良くなろう」とする必要はない。無理に距離を縮めようとすると、かえって関係が悪化することもある。
目指すのは「機能する関係」だ。挨拶ができる、業務上の連絡が取れる、お互いの役割を果たせる。それで十分。友人関係を求めているわけではない。
業務上のやり取りを明確に、感情を混ぜずに行う。それができれば、嫌いであっても「良い仕事」はできる。
「好きではないが、一緒に働けている」で十分
管理職として14年、様々なスタッフと働いてきた。今振り返ると、「嫌い」だと思っていたスタッフとの関係が、時間をかけて変わったことは多い。
相手が変わったわけでも、自分が我慢したわけでも、仲良くなったわけでもない。ただ、「機能する関係」を保ち続けているうちに、感情の温度が変わっていった。
嫌いなスタッフとうまくやろうとしなくていい。ただ「一緒に仕事ができる関係」を、冷静に丁寧に維持することが、管理職としての現実的なゴールだと思っている。
※この記事は個人の経験と見解に基づくものです。