はじめに
管理職になってから、ふとした瞬間に「自分だけがうまくいっていない」と感じることはありませんか?
周りの管理職はスマートにこなし、部下からも信頼されているように見える。
なのに自分は…と、気づけば他人と自分を比べて、落ち込んでしまう。
私自身も、そういう感情に何度も飲み込まれてきました。
けれど今は、そのたびに「ある視点」を取り入れることで、少しずつ立て直せるようになっています。
今回は、そんな“比較の罠”から抜け出すための3つの視点をお届けします。
1. 「見えているのは成果の“表面”だけ」
人と自分を比べて落ち込むとき、私たちはつい“完成された姿”だけを見てしまいます。
- 成果
- 立ち振る舞い
- 信頼されている様子
しかし、それらはほんの一部、しかも相手の「外側」にすぎません。成果が出るまでにどれだけの苦労があったのか、どんな挫折を経てきたのか、どんな不安や葛藤を抱えているのか。それらは他人からはほとんど見えません。
一方で、自分の失敗や弱さはすべて自分自身で見ているため、余計に「自分は劣っている」と錯覚してしまうのです。
この“見えている情報の差”に気づくだけでも、比較の構図は大きく変わります。
ここで有効なのが、「自分軸での比較」に切り替えることです。
- 去年より、報連相のスピードが上がった
- 先月より、イライラせずに部下と接する回数が増えた
- 昔はできなかった書類整理が、今は自然にできている
こうした小さな成長を“過去の自分”と比べて認めることで、心はスッと落ち着きます。
他人と比べるのではなく、昨日の自分と比べてどうか。これが、継続して前に進むための健全な視点です。

2. 「比較していることに“気づく”だけでOK」
人と自分を比べてしまうのは、ある意味自然なことです。ですが、それに気づかないまま感情に振り回されてしまうと、落ち込みが長引いたり、自信をなくす原因になります。
そこでおすすめなのが、「あ、今比べてるな」と自覚することです。
私は落ち込んだとき、意識的にこう問いかけます。
「今、自分は何と比較して落ち込んでる?」
この問いかけをするだけで、自分の思考が整理されていきます。
たとえば「Aさんはチームに信頼されているのに、自分は…」と感じたとします。そこに気づいた瞬間、「じゃあ自分はどういうアプローチをすれば、信頼を積み上げられるだろう?」と前向きな視点が生まれます。
このように、比較による落ち込みの正体は、“現実”ではなく“思い込み”であることが多いのです。
気づいてラベルを貼るだけで、思考と感情は少し距離を取れます。すると、行動に繋げる余裕も生まれるのです。
3. 「結局は“自分次第”という感覚を取り戻す」
人と自分を比べて落ち込んだとき、一番大切なのは「自分の中に主導権を取り戻すこと」です。
誰かを変えようとしても、うまくいかないことの方が多いものです。周囲の反応や環境にばかり意識が向いていると、ますます自分の行動が鈍ってしまいます。
僕が管理職になってから気づいたのは、
誰かを変えるより、自分を変えるほうが簡単で早い。
という事実でした。
- 自分の捉え方
- 自分の行動パターン
- 自分の感情との向き合い方
これらはすべて、自分自身で見直すことができます。環境や人間関係を変えなくても、自分の“捉え方”が変われば、世界の見え方はがらりと変わるのです。
たとえば「また比較して落ち込んでるな」と気づいたら、それは“心を整えるチャンス”だと捉えます。
落ち込む=ダメではなく、 落ち込む=回復のきっかけ
このように意味づけを変えるだけで、心の主導権を自分に戻すことができます。
大事なのは、他人にどう見られるかではなく、自分が自分をどう整えるか。それがセルフマネジメントの本質です。

おわりに
落ち込みや自己否定がゼロになることはないかもしれません。
でも、それに飲み込まれずに立て直せる「視点」を持っていることは、管理職としてとても大切な力だと思います。
私たちは、完璧な管理職ではなく、揺れながらも前に進んでいる存在。
だからこそ、同じように悩む誰かのヒントになる言葉を、これからも伝えていけたらと思っています。
あなたも、自分にしかできないマネジメントを、少しずつ育てていきましょう。