「自分でやった方が早い」という言葉は、管理職の口から最もよく出る言葉の一つだと思う。
頼んでもうまくやってもらえない気がする。説明する時間が惜しい。結局、自分でやることになる——このループから抜け出せない管理職は多い。でもこのループを続けると、管理職一人に業務が集中して、チームとして機能しなくなる。
「任せる」ことが苦手だった私が、少しずつ変えていったプロセスを書く。
「任せられない」の正体を探る
「人に任せられない」という感覚の裏には、いくつかのパターンがある。
完璧主義
「自分の基準に達していないと気になる」タイプ。自分でやれば確実だが、それを維持しようとすると仕事が減らない。
失敗を恐れる
「任せて失敗したら自分の責任になる」という不安。任せた結果への責任を取りたくない、という感情が行動を止める。
スタッフへの不信感
「あのスタッフには難しい」という判断。でも任せずに育てる機会を与えていないことが、その判断を固定させている可能性がある。
「任せる」は「放置」ではない
「任せる」ことへの抵抗感の一つに「任せたら手放してしまう」という感覚がある。でも「任せる」と「放置」は全く別だ。
任せるとは「目的と期待を伝えた上で、やり方はその人に委ねること」だ。進捗を確認する、困ったら相談できる環境を作る、結果を一緒に振り返る——これは「任せながらサポートする」ということだ。
「任せる=完全に手を離す」ではないと分かってから、任せることへの抵抗感が減った。
「小さく任せる」から始める
いきなり大きな仕事を任せるのは難しい。最初は「失敗しても取り返せる小さな仕事」から始めた。
会議の資料準備、連絡調整の一部、記録の確認作業——これらを任せてみる。うまくいったときに「ありがとう、助かった」と伝える。失敗しても「次はこうしてみよう」と一緒に考える。
「任せると育つ」という実感を積み重ねることで、少しずつ任せられる範囲が広がっていった。
「任せる」ことで何が変わったか
任せることを少しずつ増やしていったとき、変わったことが二つある。
一つは、スタッフが自分で考えて動く場面が増えた。「どうすればいいですか?」という質問が減り、「こうしようと思うのですが、どうでしょう?」という確認に変わっていった。
もう一つは、自分に「考える時間」が生まれた。細かい業務から少し離れることで、チーム全体を見渡す視点が持てるようになった。それが管理職としての本来の仕事につながった。
「任せる」ことは、管理職のサボりではない。チームと自分の両方を育てるための、大切な仕事だ。
※この記事は個人の経験と見解に基づくものです。