「あのスタッフ、やる気がないんですよね」
先輩スタッフからそう言われることがある。確かに見ていると、動きが遅い、質問しない、言われたことしかしない——そういう場面が目立つ。
でも私は、「やる気がない」という判断を、もう少し慎重にしたほうがいいと思っている。その見立てが間違っていると、指導そのものが的外れになるから。
「やる気がない」に見えるとき、実際に起きていること
新人スタッフの「やる気がない」ように見える行動には、複数の可能性がある。
余裕がなくて動けない
新しい環境で、覚えることが多すぎる。頭がいっぱいで、次の行動が判断できない状態。やる気がないのではなく、処理できていないだけ。
何をすべきか分からない
「考えて動いて」と言われても、経験がない段階では「考える材料」がない。指示を待つのは、自分で動く基準が分からないからだ。
失敗を恐れて動けない
「勝手に動くな」と言われた経験があると、自発的に動くことをためらう。「やる気がない」のではなく、「怒られたくない」から止まっている。
本当に合っていない
これも確かにある。仕事への関心が薄い、価値観が合わない——その場合は別のアプローチが必要になる。
「やる気がない」と一括りにすると、上の4つを見分けられなくなる。原因が違えば、対処法も違う。
「動けない新人」を変えたアプローチ
私が担当した新人スタッフで、最初の1ヶ月ほどほとんど自発的に動かない人がいた。先輩からは「やる気がない」と言われていた。
少し話を聞いてみると、「何が正解か分からないから動けない」「間違えたら迷惑をかけると思って止まってしまう」という言葉が出てきた。やる気がないのではなく、怖くて止まっていた。
やったことはシンプルだった。「これとこれは自分で判断して動いていい」という範囲を明確にした。さらに「失敗したときは一緒に考える、怒らない」と伝えた。
2週間ほどで、自分から動く場面が増えてきた。やる気がなかったのではなく、動ける条件が揃っていなかっただけだった。
指導者が持ちやすい「3つの思い込み」
「言えば分かるはずだ」
一度説明したことは理解しているはず、という前提。でも人によって理解のスピードは違うし、「聞いたこと」と「できること」の間には大きなギャップがある。
「自分が新人のときはできた」
自分の新人時代の経験を基準にしてしまうこと。環境も、教育体制も、時代も違う。自分の経験はあくまで参考であり、基準にはならない。
「モチベーションは本人が持ってくるもの」
確かにそれが理想だ。でも、環境がモチベーションを作る側面もある。安心して動ける環境、認められる経験、成長を感じられる場——これを作るのは管理職の仕事でもある。
「やる気がない」の前に問うべきこと
「この子はやる気がない」と思ったとき、私は自分にこう問うようにしている。
「この人が動ける条件を、私は作れているか?」
100%指導者側の問題ではない。でも100%本人の問題でもない。その視点を持つだけで、指導の質は変わる。
やる気がないスタッフを変えるより、やる気が出やすい環境を作る方が、管理職として効率的だし、チームが変わる速度も早い。
※この記事は個人の経験と見解に基づくものです。