「なんで報告しないんだ」——そう言いたくなる場面が、管理職になってから何度あったか分からない。
患者の状態が変わっていたのに、申し送りまで言ってこなかった。トラブルが起きていたのに、後から知った。自己判断で動いて、結果だけ報告してきた。
医療・介護の現場では、報連相の遅れが直接リスクにつながる。だから管理職としての苛立ちは正当だ。でも、「報告しろ」と言い続けても変わらない現実がある。
「報連相がない」の裏にある理由を見る
報告・連絡・相談ができないスタッフには、いくつかのパターンがある。
怒られるのが怖い
問題が起きたとき「また叱られる」と思うと、報告が遅くなる。あるいは、報告する前に「自分でなんとかしよう」として余計に問題を大きくする。
何を報告すべきか分かっていない
「これは報告が必要なことなのか」の判断基準が曖昧なまま育ってきたスタッフは、判断できずに迷っている。悪意はない。
報告して否定された経験がある
過去に「そんなこといちいち言わなくていい」と言われた経験が、報告を躊躇させていることがある。特に転職してきたスタッフや、前の職場の文化が違う人に多い。
この3つのどれかであることが多い。そして「怒る」で解決するのは、実は①のパターンをさらに悪化させる。
私が変えた「受け取り方」
以前の私は、報告を受けるたびに「もっと早く言ってほしかった」という反応を出していた。これが問題だった。
報告を受けたとき、まず「報告してくれてありがとう」と言うように変えた。遅かったとしても、まず受け取ることを優先した。その上で「次はこのタイミングで教えてほしい」と伝える。
これだけで、報告の頻度が変わったスタッフがいた。「報告しても受け止めてもらえる」という安心感が、動き方を変えた。
「何を報告すべきか」を明文化する
報告の基準が曖昧な職場では、スタッフも判断に迷う。「これは報告が必要か」を毎回考えるのは認知負荷が高い。
私がやったのは、「こういう場合はすぐ報告」という具体的なリストを作ることだ。患者・利用者の状態変化、クレーム・トラブル、予定の変更、迷ったとき——具体的な状況を例示することで、スタッフの迷いが減った。
「分からなかったら言ってきて」ではなく、「これとこれは必ず言ってきて」という具体性が、行動を変える。
「報連相」は文化として育てるもの
個別のスタッフへの働きかけと同時に、チーム全体の文化を変えることも大切だ。
報告しやすいチームには、共通点がある。小さな報告を受け止める管理職がいること。問題が起きても「責める前に考える」空気があること。報告が「怒られる入口」ではなく「一緒に解決する入口」になっていること。
これは一朝一夕には作れない。でも、管理職の「受け取り方」から変えていくことで、少しずつ変わる。
「なぜ報告しないんだ」と怒り続けても、問題は解決しない。先に問うべきは「なぜ報告しにくいのか」だ。
※この記事は個人の経験と見解に基づくものです。