「あのスタッフ、複数のことを同時にやるのが本当に苦手で……」
そういう相談を受けることがある。業務が重なると優先順位がつけられない、緊急対応が入ると手が止まる、いくつかの仕事を並行していると一つひとつの精度が落ちる——。
マルチタスクが苦手なスタッフへの指導に悩む管理職は多い。でも私は、「マルチタスクを得意にさせる」ことを目標にするより、「その人が力を発揮できる仕事の渡し方を考える」方向に切り替えてから、うまくいくようになった。
まず「マルチタスクが苦手」の中身を分解する
「マルチタスクが苦手」と言っても、原因は様々だ。
・どの仕事を優先すべきか判断できない(優先順位の問題)
・複数のことを頭に保持しながら行動できない(ワーキングメモリの問題)
・急な割り込みが入ると混乱する(切り替えの問題)
・そもそも業務量が多すぎる(環境の問題)
原因によって対処法は違う。「なぜマルチタスクが苦手なのか」を把握してから対応することが、指導の質を上げる。
「優先順位を自分でつけられない」場合
最も多いパターンだ。やるべきことが複数あるとき、「何から手をつければいいか」が分からずに止まる。
この場合に有効なのは、優先順位の基準を明示してあげることだ。「緊急かつ重要なもの→緊急だが重要でないもの→重要だが緊急でないもの」という枠組みを一緒に使いながら、最初は「今日やること」を一緒に確認する時間を作る。
最初は管理職が一緒に考え、徐々に自分でできるように移行する。「教える」より「一緒にやる」期間を長めに取ることが、このタイプには効く。
「割り込みに弱い」場合
集中して一つの仕事に取り組んでいるときに別の仕事が入ると、混乱してどちらも中途半端になる。
この場合は、「集中できる時間帯」を意図的に作ることが有効だ。「この時間は記録に集中する」「この時間は介助業務に集中する」と、時間でブロックする。割り込みを完全になくすことはできないが、影響を最小化できる。
また、「割り込みが入ったとき何をメモすべきか」という「中断ルール」を一緒に決めておくと、作業を再開しやすくなる。
「弱点」を補う仕事の渡し方
マルチタスクが苦手なスタッフに「一度に多くを任せない」ことは基本だ。でもそれは「仕事を少なくする」ではなく「一度に意識させる仕事の数を減らす」ことだ。
・一つの仕事が終わったら次の仕事を渡す
・複数の指示は書いてリスト化して渡す
・「今日中に必ずやること」と「余裕があればやること」を分けて伝える
これらは手間がかかるが、それによってスタッフのパフォーマンスが上がれば、長期的にはチームの効率が上がる。
「強み」を活かせる仕事を見つける
マルチタスクが苦手な人は、一つのことへの集中力が高い傾向がある。複数を同時にではなく、一つに深く向き合う力が強い。
そういうスタッフに「この業務はあなたが一番丁寧にできる」と言える仕事を見つけて任せることで、自信がつく。弱点を直すより、強みを活かせる環境を作ることで、本人の成長が加速することがある。
※この記事は個人の経験と見解に基づくものです。