「何度言っても動かない」
管理職になりたての頃、私は本気でそう思っていた。指示を出しても、なかなか動いてくれないスタッフがいる。やる気がないのか、わかっていないのか——そう考えて、また同じ指示を繰り返す。悪循環だった。
でもある日、上司から一言言われて気づいた。「uta、あなたは部下に何を聞いてる?」
私は何も聞いていなかった。ただ、指示し続けていた。
「動かない」には理由がある
人が動かない理由は、大きく3つに分けられる。
①やり方がわからない——何をどうすればいいのか、具体的なイメージが持てていない。
②意味がわからない——なぜそれをやるのかが腹落ちしていない。「言われたからやる」という状態で、主体性が生まれない。
③やりたくない——何らかの抵抗感や不安があって、一歩が踏み出せない。
この3つは対応策がまったく違う。なのに、多くの管理職が「動かない=やる気がない」と一括りにして、「もっと強く言う」という同じ対応を繰り返してしまう。
「問いかけ」で理由を引き出す
動かない理由を見極めるのに最も有効なのが、「問いかけ」だ。
ただし、ここに落とし穴がある。問いかけが「詰問」になってしまうと逆効果だ。「なんでやらないの?」という問いは、相手を防衛モードに追い込む。
私が使うようになったのは、こんな問いかけだ。
「今、この業務で一番難しいと感じているのはどこ?」——やり方がわからない人は、ここで詰まっている箇所を教えてくれる。
「この仕事がうまくいったら、どんないいことがあると思う?」——意味がわからない人は、この問いで自分なりの意義を言語化し始める。
「やってみてどう感じた?」——抵抗感がある人は、ここで本音を少しこぼしてくれることがある。
「聞く」だけで変わること
実際にこの問いかけを使い始めて驚いたのは、「聞くだけで動き出すことがある」ということだった。
あるスタッフは、「やり方がわからなくて止まってた」と正直に言ってくれた。私が具体的な手順を一緒に確認すると、翌日から動き始めた。問題は「やる気」ではなく「やり方」だったのだ。
別のスタッフは、「この業務、なんのためにやるのかが見えなかった」と話してくれた。目的を丁寧に説明したら、それまで受動的だったのが、自分でアイデアを出してくれるようになった。
モチベーションは「与える」ものではない
管理職になりたての頃、私は「モチベーションは上司が与えるもの」だと思っていた。でも今は違う。
モチベーションは、本人の内側にしかない。上司にできるのは、それを「引き出す環境をつくること」だ。
そのための最強のツールが「問いかけ」だ。答えを押し付けるのではなく、相手が自分で答えを見つけるプロセスを支援する。それが、長期的に人を育てる管理職の姿だと、14年の現場経験から私は確信している。
※この記事は個人の経験と見解に基づくものです。組織や個人差により効果は異なります。